「やくら yakura
はじめに
平成元年に独立して以来、多くの方々に支えられ今日まで設計活動を続けてきました。建築は煩雑で奥が深く、未だに皆様のご期待に十分応えられていませんが、スタッフ共々更なる充実を図るべく、今後約１年を掛け、事務所の整備を行うことにしました。
その間、ご迷惑ご不便をお掛けすることになろうかと存じますが、何卒今まで通りお引き立て戴きますよう宜しくお願いいたします。
概要
神戸事務所（北区藤原台中町）を閉鎖し、西宮事務所（西宮市すみれ台）に統廃合します。また、篠山事務所は篠山市東吹から篠山市池上に移転します。西宮事務所は登記上の本店であり、本来のあるべき状態に戻します。また篠山事務所は、以前から篠山をFieldとする私（才本）にとって、拠点の必要性を痛感しており、数年前から塒（ねぐら）として相応しい建物もしくは土地を物色してきました。自分のフィーリングに合った家や土地は数知れず、候補に挙がっては消えていきました。「やくら」はそんな建物のひとつでした。
候補の数々
「やくら」
隣の方に聞くと近々解体されると聞いて諦めていましたが、半年が経っても解体されず、不動産屋さんに当たって貰った所、縁があって手に入れることが出来ました。篠山の拠点の条件として、古い家屋で事務所用と住居用の２棟以上であること、欲を言えば蔵があれば尚いいと思っていました。「やくら」はそんな条件にぴったりでした。洋館２階建て（郵便局用に建てられたようですが実際は使用されていない）と妻入２階建ての主屋（商家の様でもあり農家住宅の様でもある）そして、蔵の３棟からなり、中庭を囲むように配置されて、中央に井戸まであります。何といっても、篠山には珍しい洋館が目を引き、中庭から臨む和住宅とのコントラストはとても楽しく、懐かしさを覚えます。「やくら」は、篠山市池上字屋蔵からきています。建築屋にとっては、持って来いの名だと感じ、即そう名付けました。
拠点としての整備方針
ヘリテージマネジャーとして、いきなり解体して新築とはいきません。尤も古い家屋を探している時点で、そんなことする筈はありませんが。洋館と蔵は修理し、妻入２階建ての主屋は、傷みがひどいので、殆ど裸にして改築（大規模修繕）しようと考えています。修理は、折角ですから公開するつもりです。出来れば、関心のある方々にお手伝いを願い修理を進めたいと考えています。例えば、洋館の外壁塗装や内壁灰中塗・残された棚を利用した家具作り。蔵や土塀の中塗補修などの作業が可能だろうと思います。
記憶 記録に残す
この家には、ひとりのおばあさんが住んでいました。これからは「やくら婆(ばあば)」と呼びます。やくら婆は、約３年前に亡くなっています。亡くなるさらに数年前に老人ホームに入所していて、都合７〜１０年は空家状態だったと聞いています。しかし、食料品（数十年前の調味料や飲料水）・衣類・下駄や靴・押し車やルームランナーまで残されており、やくら婆が、先程までそこの座布団に居て、にこやかに微笑んでいたかのような気配が漂っていました。また、日記や戦争中の作文も見つかって、これも何かの縁として記録し記憶に残そうと考えました。また、同時に、この「やくら」を通じて係わってくれた人々の人となりと思いを、記録し記憶したいと思います。具体的には、藤原次郎さん(映像作家）を真似て、子供たちに撮影させています。約１年いや完成してから係わる人もいるので、超ロングスパーンの撮影となるでしょうが、記録し記憶したいと思います。
今後の予定
出来れば、月１回のペースで公開したいと考えています。
７月９日 現場解体前の見学会 やくら婆(ばあば)の暮らした空間に触れ合う
８月 洋館 曳家見学会 井戸掃除
９月 主屋地鎮祭 洋館修理現場説明会
１０月 主屋上棟式 洋館外壁塗装
１１月 主屋構造見学会 洋館灰中塗・丹波たたき 蔵中塗修理
１２月 洋館事務所移転 蔵漆喰仕上 餅つき
１月 主屋五右衛門風呂築造見学会
２月 家具作り 建具塗装 障子張
３月 竣功 内覧会 囲炉裏・かまど火入れ式
４月 土塀修理 地元交流 コンサート
５月 中庭整備 セミナー（年２回開催予定）
果たしてこの通り行くのやら・・・応援宜しくお願いします。
やくら管理人
さいもとけんじ
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